常連さんと関係者の話から紐解く、天乙商店が長年親しまれる理由

創業から100年以上経つ天乙商店。濃厚な味としっかりした食感の天ぷらとかまぼこは、おかげさまで多くのお客様にご愛顧いただいています。なぜ長年にわたって天乙商店を支持してくださっているのか、今後会社に期待することを、常連の皆様と関係者へのインタビュー形式でお届けします。

数十年親しむ変わらない味

右から岩橋さん、梅本さん(元有田辰ヶ浜郵便局長)、梅本さん(元郵便局長梅本さんの義妹)

ーーまず、天乙商店と出会ったきっかけ、あるいはいつ頃から召し上がるようになったかを教えてください。

岩橋さん:30年以上前、(社長の)お父さんが社長だった時代からやね。当時から、食べやすい大きさでいろんな種類がある天ぷらがめずらしかった。

梅本さん(元有田辰ヶ浜郵便局長):40年くらい前ちゃうかな。天乙商店さんのかまぼこを、勤め先の郵便局のギフトとして取り扱うようになって知りました。天乙商店さんの商品は人気で、かなり郵便局も儲かりました(笑)

木野田さん(現有田辰ヶ浜郵便局長):僕は3年前、今の郵便局に赴任してきたときに贈り物でいただいて知りました。それからことあるごとに天乙商店の商品を差し入れでいただくようになって、「やっぱり美味しいな」と思って。普段の食事でも食べるようになりました。

木野田さん(現有田辰ヶ浜郵便局長)

田中さん:私は息子が社長と保育所時代からずっと一緒の幼馴染で、社長のお父さんのことも昔からよう知ってます(笑)

右から田中さん、井上さん(社長のお母様)、松谷さん(現従業員)、棚部さん(社長の叔母)

ーー長年にわたって召し上がっている方が多いんですね。昔と今の天乙商店を比べて、味など変わったと感じるところはありますか?

岩橋さん:それは思ったことないな。ずっと同じよ。

田中さん:変わってない。

田中さん

松谷さん(現従業員):変わりません。新しい素材が出てきても、うまいこと調整して昔と変わらない味にしています。

井上さん(社長のお母様):芯は一個も変わってない。(先代社長の)主人もおじいちゃんも、芯は変える人やなかったから。「美味いもん作らな売れやん」というのが主人のこだわりでした。

思わず人に贈りたくなる美味しさ

ーー普段、どのようなかたちで天乙商店の商品を召し上がっているのでしょう?

岩橋さん:自分でも食べるけど、大阪や兵庫に行くときに手土産で持っていくと喜んでくれるんや。手土産にするときは、いろんな種類の天ぷらをミックスしてな。金額的にも高価じゃない、1,000〜1,500円であげられるし。

梅本さん(元有田辰ヶ浜郵便局長):僕も和歌山はもちろん、東京、岐阜、京都、広島に住んでいる友達にたまに贈ります。そうしたら「おいしい。また贈って」って喜んでくれる。あとは、娘が東京へ嫁に行ったんやけど、たまに贈ってあげたら「昔食べてた味を思い出す」って言ってますね。

木野田さん:特別なときでなく、日常的に食べてます。朝・昼・晩と、3食で食べるときもほんまにあります。昨日の晩ごはんでも食べました(笑)3歳と5歳の子どもたちも天乙商店の天ぷらが大好きで、食べたら止まらなくなります。

井上さん:もう食べるのは日常です。お弁当にも入れるしな。

梅本さん(元郵便局長梅本さんの義妹):ほとんど毎日食べてるな。こないだ1,000円分買ったのが昨日食べ終わって、今日また買ったから(笑)毎日食べても飽きない!

ーー皆さん日常のおかずとして召し上がっているんですね。贈り物としてあげる方が多いのも驚きです。では、特に好きな商品を挙げるなら何でしょうか?

岩橋さん:やっぱ太刀魚使った「ほね天」やな。食感が他の天ぷらとは違う。

梅本さん(元郵便局長梅本さんの義妹):私やったらね、「ささ天」とか「ぴりぴりごぼう」が好きなん。お酒は飲めへんけど、そういうのが口に合う。子どもは生姜が入った「えびしょうが」が好きって言うな。

梅本さん

味はもちろん総合的に魅力がある

ーー天ぷらやかまぼこを製造・販売している会社は他にもありますが、他社と天乙商店との違いは何だと思いますか?

梅本さん(元有田辰ヶ浜郵便局長):他にも同じような商売をやってる会社はあるけど、やっぱり天乙商店さんの天ぷらが一番おいしい。調味料が他の会社と違うんかな?味が良いんです。だってね、温めず何も付けんと食べるのが一番おいしいから。

岩橋さん:自分はちょっと胃が弱いから、できるだけ油を抜こうと熱い湯にくぐらせてから、何も付けんと食べるな。夏場なんかビールのあてにすると、ものすごく美味しい。

梅本さん(元郵便局長梅本さんの義妹):味が言うことないのはもちろんやけど、社長らが箱や包装紙一個にしてもよう考えてあってね、お金をかけてるのがものすごくようわかる。誰かに贈ってあげるとものすごく喜んでくれるんよ。

鮮やかなブルーが目を惹く包装紙

岩橋さん:あと、店が入りやすいのも良いな。先代の頃から知ってるから、挨拶と雑談ができる。こういうことができるのは天乙商店くらいちゃうかな。他の店やったら買うだけで終わるから。

旅行の差し入れや引き出物でも喜ばれる

ーー次に、天乙商店の商品にまつわる思い出の話を聞かせてください。

岩橋さん:組合長を務める木材組合のバス旅行に行く前に、店に寄って天ぷらを一人分ずつ適当に袋に入れてもうて。バスの中でみんなに配って、お酒とかを飲みながら食べたのが思い出やね。一人分に分けてあるから食べやすいし、他の人と取り合いにもならない。

梅本さん(元有田辰ヶ浜郵便局長):郵便局のバス旅行でも同じことをようやりましたわ。店で300円分くらいの商品を袋に入れてもうて、つまようじをテープでつけてもうて。みんな喜んでました。

梅本さん(元郵便局長梅本さんの義妹):昔は結婚式で嫁さんが紅白のかまぼこを何百個もこしらえてもうて、親戚や近所の人に配ってたの。「紅白のまんじゅうよりもかまぼこの方がおかずになるし、美味しいから喜ぶ」って言うて、だいぶ嫁に行く人たちに薦めたよ(笑)

井上さん:私の生まれは湯浅町なんやけど、子どもの頃、天乙商店ではないけど辰ヶ浜の天ぷら屋さんが熱々の天ぷらを売りに来ててね。それが地元の天ぷらより安くて美味しかったんよ。兄も大好きで、一個食べるまで学校へ行かなかった(笑)

井上さん、田中さん

松谷さん:主人がよく仕事や旅行に行く途中に店に寄って、出来立ての天ぷらを買って持って行ってたな。熱々やから、みんなものすごく喜んでくれる。

松谷さん

棚部さん(社長の叔母):入院した時、同じ病室の人が「天乙商店の天ぷらはおいしいなぁ」って言うてくれて。和歌山市内からよく買いに来てくれてるみたいです。車でも30分くらいかかるはずなんですけど。私は実家を離れて何十年も経つけど、こういう話はありがたいことです。

井上さん:その話を聞いてから私にすぐ電話くれたよね(笑)私も「贈り物でもらって美味しかった」って電話で注文が来たら、ほんまに嬉しい。お客さんを大事にせなあかんなとつくづく思う。主人も生前、「仕事さえできて食べていけるんなら、他には何にもほしいことない」ってよう言うてました。

棚部さん

今のまま信念を忘れず、健康でいてほしい

ーー創業から100年以上の歴史を持つ天乙商店ですが、これから先の天乙商店にどのような期待をしますか?

岩橋さん:今まで通りに頑張ってもうたらええんとちゃうかな。これは自分が勝手に思ってるだけやけど、新しい商品を売ってたくさん儲けたら、子どもがおやつに食べられる天ぷらなんか作ったらおもしろいんちゃうかな。みかん天ぷらとか。

梅本さん(元有田辰ヶ浜郵便局長):僕も今のままで良いと思うよ。

梅本さん(元郵便局長梅本さんの義妹):天乙商店さんがここまで大きい会社になって、有田市もほんまに助けられてると思うよ。他府県からも天ぷらを買いに来る人がいて、有田市にお金を落としてくれるんやから。ほんまにありがたいこと。私は、社長も奥さんもずっと健康で会社を続けられることだけを願ってます。

棚部さん:私が子どもだった頃、家族全員で助け合ってきたように、この子(社長)の家族も一つになって会社を運営してるじゃないですか。実家から離れた者としては、今のままやってくれたら他には何も望みません。

井上さん:おじいちゃん、お父さんの時代から続いてきた芯を忘れんといてくれたら、今のままで良い。世間ではいろんなことが起こって、これから大変やと思うけど、身の丈に合った苦労をして一生を終えてくれたら良いと思うわ。そうしたら今の仕事で食べていくことくらいはできる。それでも受け入れてくれるお客さんがいるなら、大いに発展していってほしいと思います。